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![]() 下肢静脈瘤は治せます 下肢静脈瘤は、足の静脈の一部が膨らんだり蛇行したりする病気です。進行が遅くて生命に関わることがないため、医療従事者でも正確な知識が不十分なことが少なくありません。 男女比は約7対3で、女性に多いものの男性にも起きます。遺伝の影響が大きく、患者さん全体の約3分の1が、親や兄弟姉妹に同じ症状があると回答しています。 静脈には、血液が心臓に向かってスムーズに帰ってこられるようにするための弁という構造がありますが、何かの原因で弁が壊れると、血液が真っすぐ流れることができなくなり、一か所にたまって静脈瘤が発生します ![]() 立ち仕事の人にできやすいのは、立った姿勢だと心臓が足より遥かに高いところに位置するため、血液が戻りにくくなるからです。逆に、怪我や病気で車椅子を使っている人や寝たきりの人には下肢静脈瘤は起こりません。 下肢静脈瘤を放っておくと、何年もかけて範囲が拡がり、進行していきます。自然に消えることはありません。足の血管が、こぶのように膨らんで、青筋が立ったように浮き出ることもあれば、皮膚がでこぼこになることもあり、足が疲れる、重い、むくむなどの症状が現れます。 ひどくなると、足の栄養状態が悪化して皮膚が薄くなってきます。傷がつきやすく、治りにくくなり、ついには皮膚が剥がれて大きな潰瘍(かいよう)ができてしまいます。こうなると、激しい痛みが起きることもあります。 残念ながら薬では治らず、基本は圧迫療法です。これは、足先、ふくらはぎの下、真ん中、上の順で圧が弱くなった医療用ストッキングを、寝ているとき以外ずっとはくという治療法で、ストッキングの力で、血液が心臓にスムーズに戻れるようにするものです。 圧迫療法で静脈瘤が治るわけではありませんが、進行を食い止めることは可能です。 症状が進んでしまうと、手術を含めた外科的な治療が必要です。一番簡単なのは硬化剤という薬剤を静脈瘤に注射して、悪くなった血管を固める硬化療法です。10分以内に終了し、歩いて帰宅できますが、かなりの確率で再発します。 ![]() これに対して、ストリッピング手術、別名血管抜去術という手術を受ければ、再発することはまずありません。これは皮膚に小さな切れ目を入れて静脈を抜き取る治療法です。他にも静脈の悪くなった部分をレーザーで焼く手術もあり、どちらも通常は入院不要です。 下肢静脈瘤は自然に治ることのない病気です。我慢し過ぎず、悪化する前に病医院で相談してください。専門は血管外科ですが、近くに血管外科がない場合は、看板に外科と書いてある開業医さんで構いません。 |
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