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Copyright (C) 2011 本を書く医師キーウィ事務所 All Rights Reserved. 漢方薬は甘くない その5 好転反応は効果の証し? 漢方薬は長く飲まなければ効果がないと思っている人が多いのではないでしょうか。確かに、西洋医学だけではすっきり治らない慢性の症状に対して漢方薬を使うとなると、ある程度長期にわたって効果を確認しながら服用することがあります。 しかしその一方で、単純な症状に対してなら10分足らずで効果が現れることも少なくありません。一般的に見ても2週間もあれば何らかの効果が現れるものなので、多少余裕を見て1カ月飲んで特別な変化がなければ薬を変えるべきでしょう。万が一、症状が悪化した場合はただちに中止します。 これに関連して、一般向けのウェブサイトや書籍で、瞑眩反応 (めんげんはんのう) という言葉を見聞きしたことはありませんか。好転反応とも言い、一過性の症状の悪化または強い症状の出現を指して使うようです。そして以下のような説明が続きます。 「○○を飲むと、2、3日後に湿疹が悪化したように見える場合がありますが、これは体内の古い毒素が分解されて一時的に現れる現象です。ほら、こんなにべっとり! これは体質改善効果の現れですから安心して服用を続けてください」 しかし好転反応に関する科学的な説明はなく、出てきた毒素を分析して調べた痕跡もありません。 瞑眩 (めんげん) は 「めまい」 のことで、中国の古典では 「その臭いと味で頭がふらつくくらいの薬でないと効果がない」 という意味で使われていたようです。これを読んだ江戸時代の日本の漢方専門家が 「瞑眩なくして効果なし」 と言い出し、さらに後の時代の人たちが、使用当初出現する不快な症状は治癒の正常な過程である、と読み替えたことで混乱が起こりました。 しかしこんにちの中国では瞑眩反応という言葉自体ほとんど用いられず、日本でも好転反応の存在は否定こそされていないものの、数千人に1人出るかどうかの非常にまれな反応であると考えられています。そして、漢方薬を飲んで激しい反応が起きた場合には、その薬が体に合っていない証拠と考えて薬を替えるのが普通です。 ですから、「これは好転反応だから心配いりません」 と軽々しく言う業者がいたらおかしいと思ってください。瞑眩とか好転反応という言葉を都合よく用いることで使用を続けさせ、客を手放すまいとしている恐れがあるからです。 現在では、好転反応に関する表示は医薬品的な効能効果の標榜に該当すると考えられ、取り締まりの対象になっています。表示すると健康の保持増進効果等の虚偽・誇大広告等の表示を禁止する法律(医薬品医療機器等法 (旧 薬事法) および健康増進法第32条の2、3)違反に問われます(厚労省 「監視指導等に関する指針に関わる留意事項」 p 13」)。 なかなか病気が治らないと医師や病院への信頼を失い、聞こえのよいことを言う業者の製品に頼ってみたくなる気持ちはわからないでもありません。また医師の説明不足や不十分な意思疎通など、病院側が正すべき問題もあるでしょう。 しかし、合わない製品を使い続けてお金を搾り取られ、ひどい場合は深刻な健康被害に苦しむのは患者さん自身です。常識的な判断をし、迷ったら身近な第三者に相談するだけでも大切な体を守ることができます。 |
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