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本を書く医師 Topおざなりですか、なおざりですか
                

おざなりですか、なおざりですか


こんにちは。キーウィです。

 先日、和訳で久しぶりに 「おざなり」 という言葉を使いました。これによく似た「なおざり」という言葉もありますね。区別できますか。「おざなり」 はいい加減な気持ちで形だけ取り繕うことを指します。

 やる気がなくて手を抜いている状態に力点があるため、時間やお金を節約するために手順を簡略化したり、合理化したりする場合には使いません。だから 「おざなりな挨拶をする」 とか 「観客が少ないので、おざなりな演奏をした」 などのように使います。英語にするなら perfunctory でしょうか。
               
 Merriam-Webster 英英辞書によるとPERFUNCTORY の定義は、
 1: characterized by routine or superficiality
 (お決まりの行動、もしくは表面的に何かを行うこと)
 2: lacking in interest or enthusiasm
 (関心や熱意がないこと)

 となっていて、例文はたとえばこんなふうです。
 We went through the perfunctory customs check and out to get our ride to the office of Dr. K.
 (税関で通り一遍のチェックを受けると、空港を出て車でK博士の診療室に向かった)
 I introduced myself, and at my name his perfunctory manner changed.
 (その男はおざなりな対応をしていたが、私が名乗ると顔色が変わった)

 それに対して 「なおざり」 は、「おざなり」 以上にいい加減で、やるべきことをやらずに放っておくという意味です。「対策をなおざりにする」 とか 「壊れたままなおざりにしていた」 というふうに使います。こちらは英語で言えば neglect でしょう。

 NEGLECTの定義は
 1: to give little attention or respect to
 (関心や敬意をほとんど払わないこと)
 2: to leave undone or unattended to especially through carelessness
 (とりわけ不注意により手を付けず、または世話をせずに放置すること)

 となっており、次のような例文があげられます。
 The closed hospital has been neglected for years.
 (その病院は閉鎖されたまま、何年も放置されている)
 The government has neglected the nurse shortage.
 (政府は看護師不足に手を付けないままでいた)
         
 こうして比較すると分かるように、「おざなり」 と 「なおざり」 には決定的な違いがあります。「おざなり」 が、心はこもっていないにしても一通りのことはやっているのに対し、「なおざり」 は怠けたり後回しにしたりして結果的に何もしていないのです。

 「なおざり」 を意味する neglect は、最近カタカナでネグレクトと表記して、育児放棄を含む虐待の一種を指して使うようになりました。児童虐待調査研究会が定めた児童に対するネグレクトの定義は 「遺棄、衣食住や清潔さについての健康状態を損なう放置 (栄養不良、極端な不潔、怠慢ないし拒否による病気の発生、学校へ行かせない、など) をいう」 となっています。

 これが 「育児をおざなりにしている」 だったら、形だけは整っていることになります。ただし、それでも子供の精神的な発達には何らかの影響をおよぼすでしょう。