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耳から水が出てきません/しょっちゅう出てきます


 水遊びの季節が近づいてきました。「耳に入った水を放っておいても構いませんか」 「中耳炎になるのでは?」 「どうすれば水を出せますか」......。耳に入った水についての質問がよくありますが、通常は寝ている間に自然に抜けます。

 仰向けに寝転がって1~2分じっとした後、水の入った耳を下にするようにゆっくり頭を転がすだけで出てくることも多いですし、そちら側の耳を下にして眠れば、起きた時にはたいてい水が出て耳の入り口や枕が濡れています。たとえ直ぐ出てこなくても、およそ2~3日で自然に蒸発しますので心配いりません。

 また、聴こえに関して重要な働きをする中耳は鼓膜に隔てられていて外気には接していませんので、耳に水が入っただけで中耳炎になることはありません。どうしても気になる場合はティッシュで「こより」を作って、耳に入れる方法を薦める先生もあります。

 スポイトなど、しっかりした形のあるものを使って吸わせようとしたり、陰圧をかけたりしてはいけません。ふやけた皮膚は傷つきやすくなっているため外耳炎が起きたり、鼓膜が傷ついて、そのせいで中耳炎になる場合があるからです。
                 
 一方、耳に水が入るといつまでも抜けない、水が入った記憶がないのに耳から水が出てくる、という方は知らないうちに慢性中耳炎になっている恐れがあります。なぜこんなことが起きるのか順番にご説明しましょう。

 耳から水が出てくるのは、基本的には既に中耳炎になっていて、炎症のせいで鼓膜に穴があき、中耳に溜まった水(浸出液)が外に出てきているということです。たまたま鼓膜に穴があいていても中耳に炎症さえなければ水が出てくることはありません。

 鼓膜は耳の奥にある厚さ0.1 mm、直径1 cm弱の透き通った薄い膜で、耳の入り口から約3.5 cmの深さにあります。この鼓膜が空気の振動を敏感にとらえることで、中耳を経て、さらに耳の奥にある内耳に伝わり、音を聞くことができるのです。

 急性中耳炎の際に自然に鼓膜が破れることがあるのは、浸出液を外に出して中耳をきれいにし、炎症を治そうという自然の治癒力があるからです。一時的に聞こえは悪くなりますが、たとえ鼓膜が完全に破れたとしても全く聞こえなくなるということはありません。なによりも鼓膜は再生しますので、鼓膜にできた穴は通常、数日から一週間で自然に塞がります。

 しかし急性中耳炎を繰り返したり、破れた穴が大きかったりするときれいに治らないことがあり、その場合は様子を見た上で鼓膜の穴を人工鼓膜で塞ぎます。本物の鼓膜に似た薄い膜を丸く切って穴を覆うだけの比較的簡単な手術で、人工内耳のような特殊な装置を埋め込むわけではありません。

 治療が不十分で炎症が慢性化して鼓膜に穴が開いたままになり、いつも、またはしょっちゅう浸出液(耳垂れ)が出るようになった状態を慢性中耳炎といいます。慢性中耳炎になってしまうと、治療で炎症を抑えても鼓膜の穴は塞がりません。

 風邪や、飲酒、過労などにより炎症が再燃すると、また耳垂れが始まりまってしまいます。特に痛みや発熱などの症状はなく、耳の奥に違和感がある、という感覚しかない場合が多いため放置してしまう方も多いようです。

 しかし慢性中耳炎は自然に治ることはなく、進行すると難聴や耳鳴りに悩まされるようになり手術が必要になることもあります。また、中には骨を溶かして、顔面神経の麻痺、髄膜炎、脳膿瘍などの合併症が発生するタイプのものもありますから、慢性中耳炎と診断されたことのある方はあまり自覚症状がなくても定期的に耳鼻科を受診し、先生に状態を確認してもらってください。もともと鼻炎や副鼻腔炎のある方は悪化しやすいので要注意です。




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