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Copyright (C) 2011 本を書く医師キーウィ事務所 All Rights Reserved. 漢方薬は甘くない その4 漢方薬の副作用 「漢方薬は長い年月にわたって無数の患者に対して使用され、安全で有効なものだけが残ってきた」 という記述を見かけたことはありませんか。この主張に基づいて、漢方薬は科学的な検証が不十分なまま医薬品扱いされ、臨床試験が免除されてきました。しかし近年、その使用頻度が高まるとともに副作用の報告が増えています。 副作用の症状で最も多いのは胃腸障害、発疹、浮腫、吐き気、下痢や軟便、便秘で、たいていは程度が軽く、服薬を中止すれば自然に治ります。しかし重大な副作用で死亡することもあり、一番有名なのが1991年に発生した小柴胡湯 (しょうさいことう) による間質性肺炎です。 C型肝炎に罹患してインターフェロン療法を行っている患者さんに小柴胡湯を追加投与したところ、症状が大きく改善したように見えたのもつかのま、続いて発生した間質性肺炎により死亡する患者さんが相次ぎました。 その後、インターフェロンと小柴胡湯の併用は正式に禁止されています。そしてこの事件以外にも慎重に使用しなければならない漢方薬が次々に見つかっています。 アレルギーも要注意です。漢方薬は自然の成分でできているから安全だという人がいますが、自然なら安全とは言えないことは食物アレルギーを考えていただけば分かるはずです。 漢方薬も同じで、植物や動物の体の一部を何種類も組み合わせて利用しているので、何が原因でアレルギーが起きてもおかしくありません。先に述べた小柴胡湯による間質性肺炎もアレルギー反応が引き金になったと考えられています。 中国など海外で生産された漢方薬はさらに危険で、日本では禁止されている危険な成分を含んでいることがあります。例えば、つる性植物の茎である防已 (ぼうい) や、アケビとして知られる木通 (もくつう) は生薬として日本で認可を受けていますが、中国では名前は似ていても種類の異なる広防巳 (こうぼうい) や関木通 (かんもくつう) を用いることがあります。 この広防巳と関木通は同じ毒性物質を含んでおり、この物質は腎臓障害を起こす他に発癌性も疑われています。また、効果を高めるために鉛などの金属、合成ホルモン、下剤、ひどい場合は麻薬を意図的に混ぜる例もあり、中国政府の規制にもかかわらず現在も出回っていると指摘されています。 漢方薬は副作用がなく効き目が穏やかで体に優しい薬などではなく、西洋薬と同様に効果が急激に現れることもあれば、重い副作用が起きることもあります。自然の生薬については科学的な分析がようやく始まったところですし、また漢方薬の特徴として人によって反応が変わるので、西洋薬以上に副作用の発生が予測しづらいという側面もあります。 西洋薬と同じく漢方薬も決められた量と使用方法を守らなければいけないのは言うまでもありません。副作用の約80%が投与後3日以内に現れますが、数ヵ月間服用を続けて初めて出てくるものもあります。漢方薬は長く飲まなければ効かないと勘違いして、我慢して使い続けるのは危険です。 (写真上は牡丹、下は芍薬で、どちらも生薬です。ともにボタン科ボタン属で花が似ていますが、葉が違います。牡丹は葉の先が三つに割れているのに対し、芍薬の葉は笹の葉のようにすっきりして割れていません。英語では区別せず Peony と言い、敢えて訳し分ける場合は、牡丹が木、芍薬が草に分類されていることから、牡丹を Tree peony と呼びます) |
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