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本を書く医師 Topチャンスは前髪をつかめ
                

チャンスは前髪をつかめ


こんにちは。キーウィです。

 翻訳はずっとPCに向かう仕事です。特に書籍翻訳は長丁場なので、体調管理が鍵になります。翻訳者の職業病というと、よく耳にするのが腰痛と肩こり。幸いこれは気になったことがありません。 割と姿勢がよいのと、両手首を載せるリストレストを使っているからでしょうか。

 しかし大型の医学書を翻訳したときは、お尻が床ずれ寸前になりました。ずっと座りっぱなしなので、腰の骨が内側からおしりの筋肉や皮膚にあたって、今にも外に突き出てきそうに痛むのです。これは褥瘡 (じょくそう)、いわゆる床ずれが起こりかけているということです。
                  
 褥瘡は長期臥床、いわゆる寝たきりの患者さんに多く発生します。自分で体の向きが変えられないため、体重が皮膚の同じ場所にばかりかかり、その部分に血液が十分流れません。すると酸素や栄養が不足して組織が障害され、ひどい場合は皮膚がただれて骨が見える状態になることもあります。

 まったく動かないと数時間で床ずれが起きてもおかしくないので、介護の現場では 2時間ごとに体位を変えています。この褥瘡、自分で動ける人も安心できません。強い睡眠薬を飲んで同じ姿勢で眠ったり、ボーッとして座ったままだったりすると発生することがあります。……長丁場の翻訳でも。

 この仕事が終わってから知人に苦労話をしたところ、「そんなに大変ってことが始まる前にわかってたらどうしてた?」 と聞かれました。「それでも引き受けたか?」 ということでしょう。

 それで、ちょっと考えてから、「もう少し納期を長めに設定してくれるように頼んでたと思う」と言いました。つまり 「引き受けなかったよ」 とは答えなかったわけです。

 そう、大変だとわかっていても引き受けたと思うんですよね。以前から、広い層に向けて書かれた本を訳してみたかったからです。それまでに担当した書籍翻訳は、限られた研究者を対象にする専門書ばかりでした。そうしたら、思いもよらないところからお話がありました。
     
 聞くからに大変そうだったので、いったんは 「少し検討させてください」と言ったものの、その翌日には 「やります」 と回答していました。こういうときは考えても仕方ないのです。チャンスの女神は前髪をつかむしかありませんから。