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心理学における自尊心とは こんにちは。キーウィです。 京都の舞妓さんと話す機会がありました。いつの時代になっても伝統を受け継ぐ人がなくならないのは素晴らしいことです。京都の舞妓さんとは言っても実際の出身地はさまざまで、芸の道を志す少女たちが全国から集って厳しい稽古に明け暮れているそうです。 話を聞くと想像以上に厳しい世界で、親元を離れ友人知人もいない土地での集団生活で、休日もほとんどなければお給料も貰えません。途中で断念する人も相当数にのぼると思われます。 舞妓さんは芸妓さんになる前の修業段階で、約5年間の修練を積んだのちに晴れて芸妓さんになります。お話した舞妓さんは年内に芸妓になることが決まっているそうなので、舞妓としての修行もあと少しです。 まだ20歳そこそこのはずですが非常に大人びているのが印象的でした。舞妓さんというと京舞を踊る姿や、撮影会のモデルなどの少し澄ました表情を思い浮かべますが、実際のお仕事は唄や踊り、三味線などをお座敷で披露してお客さんを接待することです。 極めて特殊な職業ではあるのですが、俗っぽい言い方をすれば接客のプロですから、話が上手で頭の回転が速く、人の気を逸らしません。芯の強さとともに迷いの無さからくる強さというのか、自尊心 が感じられて余裕があり、カッコいいなと思いました。 実は現在翻訳の準備を進めている書籍のテーマが自尊心です。この自尊心(self-esteem)という言葉、心理学でいう自尊心と一般的に使われる自尊心の意味が必ずしも一致していません。例えばプライド(pride)と同じように使われることがよくありますが、心理学的には両者は全く違います。 プライドは、基本的には 「他者と比較して自分のほうが上であると思うことで得られる感情」 です。つまり常に比較対象があり、外部の評価に依存する相対的な自信ですから常に揺れ動き、ちょっとしたことで傷ついたり満たされたりして心が休まることがありません。 これに対して自尊心は自分のことを大切な存在だと思う心です。他者は関係ありません。今の自分がどうであれ、自分を愛し、守り、自分の人生を切り開いていくことに自分で責任を負うということで、この自尊心を持っていれば他者から悪く言われたり、挫折するような体験をしたりしても心の深い部分は揺らぐことがありません。 逆に自尊心が低いと、その裏返しとして異常にプライドを気にすることになりがちです。これは内心自分をつまらない人間だと思っているために 「でも、あの人よりましだ」 と考えることで何とか自分を守ろうとしているのです。その意味で、プライドと自尊心は対極にある概念と言えます。 では、どうすれば自尊心を育むことができるでしょうか。英国の医師で作家のサミュエル・スマイルズは、約150年前に出した著作 『自助論 (Self-Help)』 の中で、「自分の最良の援助者になれ」 と書いています。 この言葉の意味は、たとえ他者から十分な理解と愛情を得られなかった、もしくは得られずにいる場合でも、自分が自分の親友または親になって自分を抱きしめてやりなさいということです。自分のことを本当にわかっており、心から理解してくれる存在=自分自身がすぐそばにいることに気付くことが幸福への第一歩なのです。 |
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