「本を書く医師」が医学情報をわかりやすく伝えます



 超訳 養生訓へのリンク
現代に生きる養生哲学書 健康が幸福の基盤になる


 日本人の「遺伝子」へのリンク
病気の遺伝子を封じ込め 健康な遺伝子を作るには


 日本人の病気と食の歴史へのリンク
健康長寿を目指し続けた 日本人1万年の集合知


 胃腸を最速で強くするへのリンク
めくるめく消化管の世界 胃腸を知って健康に!


 長寿の習慣へのリンク
健康長寿は自分で作る  百活は「4つの習慣」から


 内臓脂肪を最速で落とすへのリンク
おなかの脂肪は落とせる!結果の出る減量法


 日本人の健康法へのリンク
もう騙されない!    健康情報の見分けかた


 日本人の体質へのリンク
Amazon本総合1位!  日本人のための健康法は



本を書く医師 Top足と脚の関係は foot と leg の関係にあらず
                

足と脚の関係は foot と leg の関係にあらず


こんにちは。キーウィです。

 日本語で手と 「あし」 と言えば通常は足という漢字を思い浮かべますが、もう一つ脚という字もあり、正確に表現する際には両者を使い分けます。歩くときに地面に付く足首から先の部分が足で、前後に動かす足首から上の長い部分が脚ですね。足は英語で foot、脚は leg です。でも足と脚の関係は foot と leg の関係とは違います。
          
 身近な手の指を例にとって説明しましょう。ご存知のように英語では親指をthumbと言って他の指とは区別します。でも日本語では親指とそれ以外の指という分け方をしませんから、
 You have four fingers and a thumb.
と書いてあったら、「指が5本ありますね」 と翻訳するしかありません。

 でもネイテイブが親指は他の指とは全くの別物と考えているかと言うとそんなことはないんです。例えば 「手には指が5本ある」 を英語にする場合は、
 A hand has five fingers.
で全く問題ありません。つまり finger には 「親指以外の指」 という意味と 「指の総称」 という二つの意味があり、親指について特に言及する場合は thumb を使いますが、そうでないときはすべてひっくるめて finger でよいのです。

 日本語の足と脚についても同じ現象が見られます。使い分けるといっても圧倒的に使う頻度が高いのは足で、「あし」 全体を表現するときにはこちらを使います。例えば 「最後は疲れて足に力が入らなくなっちゃった」 と言うとき、力が抜けたのはfoot の部分だけではありません。むしろ leg の部分でしょう。でも 「足」 と書きます。

 また徒歩や移動を象徴的に表わす場合も同様です。「その事故で3万人の足が乱れた」 「今日は向こうの薬局まで足を伸ばした」 というのがその例です。通常は脚という漢字は使いません。脚には解剖学的な分類以外の用法がないのです。

 これに対して英語のfoot には慣用表現を含めて 「あし」 全体を指す用法がありません。
 When I saw the entrance of the clinic, I suddenly got cold feet.
 「病院の玄関を見たら足がすくんじゃったよ」

 I think it is about time to stand on my own feet.
 「そろそろ自活しようと思って」
      
 こう見ると英語の foot は解剖学的な名称から発展して、「踏ん張る」 というニュアンスを持っていることがわかります。

 皆さんご存知の put one's foot in one's mouth (うっかり口を滑らせる)、「自分の足を口に入れる」 というおかしな表現ですが、英英辞書および英米のインターネット質問サイトで詳しく調べたところ、なぜこんな言い方をするのか現在では不明だそうです。1900年頃始まった慣用表現で、家畜の口蹄疫 foot-and-mouth disease と関係するのではないかとのことでした。

 例えばこんな風に使います。
 The nurse put her foot in her mouth when she called the doctor by the name of his young rival doctor.
 「看護師はその医師を医師がライバル視している若い医師の名で呼んでしまった」

 医療ドラマのワンシーンにありそうですね。