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本を書く医師 Top無意識に首を振るのは病気ですか




無意識に首を振るのは病気ですか


 テレビを見ながら首を振っているよ、と家族に指摘されたけれど、自分ではわからないとか、知人にそういう人がいるということはありませんか。単なる癖のようにも見えますが、少し心配になってしまいます。

 もちろんこの症状だけで確定的なことは言えませんが、このように自分の意志とは関係なく出現する異常な運動を 「不随意 (ふずいい) 運動」 といい、よく見られるのがチック症です。

 個人差はありますが、一般的に話に夢中になっている時や、テレビを見ている時、散歩している時などに症状が出ることが多いようです。無意識のうちに、体の一部が繰り返し動いたり、言葉を発したりするもので、特に幼児から小学生くらいに多く、大人になってから発症することもあります。
             
 まばたきしたり、額にしわを寄せたり、首の筋肉に限局した軽い痙攣(けいれん)によって首を振る、曲げる動きなど症状は多彩ですが、チック症の大きな特徴は、自分で意識していれば症状を止めていられること、そして、緊張感を持って何かの活動に打ち込んでいるときも症状が出ないことです。

 多くは一過性で、念のため MRI の検査を受けて異常が無ければ、大きな脳の病気はありません。日常生活に支障がなければ薬も不要ですし、もちろん遺伝もしません。

 チック症は、特に子供では、けいれんを起こしやすい体質に、ストレスや、体が発育途上であることが加わって発症すると考えられています。大人になってから発症したものには、純粋に心因性のものもあるようです。

 ここで気を付けていただきたいのは、発症自体にストレスが関わっているのは確かですが、ストレスがあるときに症状が出るわけではなく、むしろリラックスして比較的単純な作業をしている時に起きるということです。

 これは、テレビを見ている時や、友人とおしゃべりしている時に症状が出やすいという事実を考えれば分かりやすいと思います。子供だと学校では症状が目立たないのに、家庭では目立つということがよくあり、以前は、これは家庭に問題があるからだと誤解され、親が悩むということがありました。

 しかし実際は、学校では気持ちが張りつめているために症状が抑えられ、家庭ではリラックスしているから症状が出るというのが真相と思われます。
          
 テレビを見ている時にチック症の症状が出やすいのは、テレビの画面は視聴者が何もしなくても勝手に変化し続けるため、視聴者が受け身になって、脳がリラックスするからです。逆に自分で判断し、考えながら情報を手に入れなければならない作業だと、集中力を要するため症状は出にくくなります。

 ここからは余談ですが、ある研究グループが長時間テレビを見せ続ける実験をしたところ、被験者の脳波が、何も考えていない状態と同じ波形になっていったそうです。これは、思考力が停止してテレビの印象だけが頭に残る無防備な状態で、言い換えれば洗脳されやすい状態になっているということです。

 テレビ番組の制作者は、映像を用いて印象操作する方法について驚くほど研究しています。テレビを楽しむのは良いのですが、客観的な目を持ち続けたいものです。




                     


       医師兼著者、医学翻訳者によるオリジナル記事を掲載しています。
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