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本を書く医師 Top感情で選び、理性で買う
                

感情で選び、理性で買う


こんにちは。キーウィです。


 肉料理に目がない知人がいます。先日もデパートの物産展で、いかにも美味しそうなチャーシューがぎっしり乗ったお弁当を見つけたのに、何と買わなかったというのです。「一瞬心が揺れたけど、何か体に悪そうな気がしてね」。

 えっ、柄にもない。いったいどうしたの?
        
 決断したり選択したりする際に欲望と理性がせめぎ合うという言い方をよくします。しかし実際には、直感的な感情が選択を行い、理性が理屈付けをしてその選択を正当化するらしいことが分かってきました。チャーシュー弁当であれば、感情が買いたいと思えば理性は買う理由を、感情が尻込みすれば理性は買わない理由を考えます。

 社会心理学者ジョナサン・ハイトは、主導権を握っているのは感情で、理性による行動の制御には限界があると主張し、人間の感情と理性を 「象 (欲求・感情) の背中に乗った象使い (意志・理性) 」 に例えています。

 「私は手綱を握り、あっちへ引っ張ったり、こっちへ引っ張ったりして、象に回れ、止まれ、進めなどと命令することが出来る。象に指令することはできるが、それは象が自分自身の欲望を持たない時だけだ。象が本当に何かしたいと思ったら、私はもはや彼にかなわない」
                 
 人間は、自分は正しい選択をしたと思いたいものなので、欲求がとても強ければ理性はあらゆる理屈を駆使して購入すべき理由をひねり出します。さらには選択した後も良い面を一生懸命探して 「後付けの理由」 をもっともらしく語り、自分を安心させます。

 だからマーケティングの鉄則は、感情レベルで消費者の心をつかみ、それと同時に理性を納得させられるような根拠を提示することです。

 例えば自動車のCM。きれいな新型車を見た視聴者は 「かっこいいな、欲しいなあ」 と思いながらも、高いんじゃないかな、とか、今の車を買ってからまだあまり経ってないな、と迷います。

 そこに 「この車を買ってから家族の会話が増えた」 という子供の声のナレーション。これが言い訳として作用します。

 この手法は食品でも使われていますね。「おいしそう、おなかふくれそう (感情)+肌を蘇らせる/血液をきれいにする/血糖値を下げる成分が入っています (理性) 」というパターンです。実際に含まれる有効成分はおそらくごく微量でしょうが、これが強力な言い訳となって消費者の背中を優しく押します。
    
 さて知人はチャーシュー弁当を見て食欲を刺激されたものの、体に悪いんじゃないかと一瞬ためらいました。一面にチャーシューが敷き詰められたお弁当の前では、さすがの理性も理屈付けができなかったのです。

 もし、お弁当の隅にインゲンや赤ピーマン、ホウレンソウのソテーなどがほんの少しでも添えてあれば、「野菜もあるからいいや」 という言い訳ができて、知人は手を伸ばしていたでしょう。多少値段が高くなっても、このほうが売り上げが伸びるだろうと思います。