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本を書く医師 Top多言語リレー翻訳
                

多言語リレー翻訳


こんにちは。キーウィです。

 出版翻訳の仕事でリレー翻訳をしたことがあります。この書籍の原書は英語以外の欧州系の言語で書かれており、英語版を日本語に翻訳しました。

 もともと一部で高く評価されていた書籍だったのが、英語に翻訳されたことでその存在が広く知られるようになり、そこから多言語に翻訳されているようです。国際線の飛行機の乗り継ぎ拠点をハブ空港といいますが、この場合は英語がハブ言語の役割を果たしているのです。

(ユナイテッド航空HPより。ニューヨークとヒューストンの巨大な国際ハブ空港) 

 …と、ここまでは何となくかっこよく聞こえるかもしれませんね。

 しかし!

 ここで発生するのが伝言ゲーム現象です。

 これは、言語Aから言語Bに翻訳した際に、意味を取り違えたり、誤記載をしたりしていると、そのまま言語Bから言語Cに翻訳されるだけでなく、場合によっては新たな誤記載が加わって、最終的な訳書が原書とはすっかり違う内容になってしまうことを言います。

 しかも、この案件の問題はこれだけではありませんでした。使用した英語版には、単純なスペルミスだけでなく、医学的に正反対の意味になってしまう致命的な誤記載や、さらにはただ単語をつなげただけの怪しげな英文が相当数見られるのです。医学知識が不十分な翻訳者が雑な仕事をしたという印象です。

 この英語版は米国で既に発売されています。Amazon.comで書評を見たところ、「翻訳がひどい」 と書いているレビュアーが何人かいました。やっぱりです。これをそのまま和訳しようものなら、とんでもないことになって、今度は日本語版のレビューに 「翻訳がひどい」 と書かれるに違いありません。

 そうは言っても、おかしな点をすべて出版社に問い合わせていたら時間がどれだけあっても足りません。また今回は、誤記載がどの段階で発生したのかもはっきりせず、ひょっとしたら欧州語で書かれた原書自体に問題があった可能性もあります。

 日本語版を出す出版社と相談したところ、「キーウィさんの判断で原著者の意図を想像し、医学的に問題がないよう仕上げてください」 とのこと。要するに 「おまかせします」 ということです。
     
 こうなったらやるしかないので、コメントをつけながら、しらみつぶしに修正しました。

「原文は○○○となっていますが、これは△△△の誤記載と考え、上記のように訳出しました」

「原文では□□□が◇◇◇を産生すると書かれていますが、実際に産生するのは×××ですので、読者の誤解をさけるため上記のように表現いたしました」

「原文の表現が曖昧で、具体的な☆☆☆の名称がわかりません。そのため具体名は挙げずに 『いくつかの☆☆☆がある』としておきました」

 という具合です。大変でしたが、納得のいく訳文が作れて実にすっきりしました。好きにさせてくれた出版社に感謝です。