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医学翻訳者、エイズ孤児を少しだけ支援する こんにちは。いよいよ蒸し暑い季節が到来し、少し憂鬱なキーウィです。 しかし今日は先日購入した新しいシャツを着て爽やかに過ごしました。実はこのシャツはエイズに罹った子供たちの施設で作られたものなのです。 タイ北部のチェンマイ市郊外に、両親をエイズで亡くしただけでなく、自分たちも生まれる時にエイズウィルスに感染した孤児たちの生活施設バーンロムサイがあります。運営資金は主として衣類や日用品を作って販売したり、敷地内でコテージ風のゲストハウスを運営したりすることで得ています。 施設で作っていると言っても実際の製作には専門家が関与しているためデザインも縫製もしっかりしていますし、熱帯の国ならではの暑さを逃がすようなデザインや素材が用いられ、日本の夏にはぴったりです。実店舗は神奈川県の鎌倉市にありますが、全国でキャンペーンを行いネット販売もすることで販売の機会を増やしています。 先進国ではエイズに対する理解がだいぶ深まってきましたが、途上国ではこの子たちのような母子感染のケースに対してさえ偏見が根強く、貧困も加わって厳しい状況が続いています。 ただ治療に関しては、薬剤の開発が進んだことで現在では早い時期に診断を受けて適切に病状を管理できさえすれば、エイズに感染していない人とほとんど同じくらい生きられる確率が高くなりました。 エイズの治療薬は効く仕組みの違いによって数種類に分かれており、これを組み合わせて飲むのが一般的です。どれもエイズウィルスの増殖を抑える働きがあり、ウィルスによって破壊されていた本来の免疫機能を取り戻し、維持していくのが目的です。 しかしエイズウィルスそのものを殺すことはできませんからエイズを治すことはできません。そのため薬を一生飲み続ける必要がありますが、治療薬はかなり高価なので途上国の患者がずっと飲み続けるのは簡単ではありません。 そして耐性の問題があります。エイズ治療薬は中途半端な飲み方をするとウィルスがすぐに耐性を獲得して薬が効かなくなってしまうのです。この原因はエイズウィルスの進化のスピードが速いためで、内服10回のうち1回か2回飲み忘れたり、または飲めなかったりしただけで2人に1人が治療に失敗すると言われています。 このような治療薬の欠点を補うものとして期待されているのが感染する前に実施する予防接種、すなわちエイズワクチンです。効果は半年から数年くらいしか持続せず、ウィルスの感染を完全に防ぐこともできませんが、ウィルスに感染する危険性が小さくなり、たとえ感染したとしてもエイズの症状が現れにくくなります。また治療薬よりは安く製造できると考えられています。 しかしここでもエイズウィルスの進化のスピードが速いことが大きな障害になっています。せっかくワクチンを作ってもウィルス自体が変化してしまうために効果がなくなってしまうのですね。これに似た現象はインフルエンザワクチンでも見られますが、エイズウィルスはインフルエンザウィルスに勝るとも劣らないほど変化しやすいのです。 こんな状況を知れば知るほど個人にできることなどなさそうに思えてしまいます。しかしバーンロムサイの支援システムであれば、小物一つ購入するだけでも必ず現地の子供たちに役立つのですから、機会があればぜひ商品を手に取ってみてください。 バーンロムサイとはタイ語で 「ガジュマルの木の下の家」 という意味だそうです。日本語のきれいなウェブサイトもあります。 |
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