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本を書く医師 Top私が上書き翻訳をしない理由
                

私が上書き翻訳をしない理由


こんにちは。キーウィです。

  医学書や医学論文などの翻訳を含め、いわゆる実務翻訳では訳文を原文ファイルに上書きするよう依頼されるのが普通です。クライアントから預かった原文データの上から直接文字を入力することで、原文のレイアウトや字体、フォントなどをそのまま再現できるからです。

 ある翻訳会社のウェブサイトによると、この方法が日本で普及し始めたのは1990年代からで、現在は英日、日英ともに主流になっているとのこと。ただ本当に上書きしてしまうと原文がどんどん消えていくことになるので、段落あるいは文単位で続けて訳文を入力して上下に英日併記にしてから原文を消去する翻訳者が多いそうです。
               
 ……と、他人事のように書いてきましたが、それは私が基本的に上書き翻訳をしないからなんですね。原文ファイルがExcelや Power Point だと上書き翻訳するしかなくなることもありますが、Word で上書きをしたことはないんじゃないかと思います。

 その理由はいくつかあり、一つは実務翻訳といってもさまざまで、医学系の翻訳は工学系やIT系と比べると単純な文章が多いということです。有名なTradosも触ったことがありません。そしてもう一つは私自身が正規の翻訳指導をほとんど受けたことがなく自己流でこなしてきたことです。つまり上書き翻訳という方式を知らなかったのです。

 しかし最大の理由は上下に英日併記になっている状態に馴染めず、原文と訳文を比較したり、訳文を続けて読んで文と文のつながりを確認したりするのに手間取るから。これは慣れの問題なのかもしれません。実際に上書き翻訳がこんなに普及しているのはそれだけの長所があるからでしょう。

 ただ個人的には原文と訳文が左右隣り合わせに併記されていて、それぞれを上から下まで続けて読めたら簡単に訳出の確認ができるのに、と思うのです。特別な修練を積んでいない者にとっては上下に並ぶ物より左右に並ぶ物を比較する方が簡単です。人間の目は横に並んでいますからね。

 この形で翻訳を行うために現在は MED-Transer という翻訳ソフトを使っています。原文ファイルを画面上で開くと、英日翻訳であれば左側に英文が一文ずつ分割されて縦に並びます。この状態で機械に翻訳させるとそれぞれの英文の右隣に対になる日本語訳が上から下に向かって並びます。

 ただし、翻訳ソフトの翻訳能力は話にならない低レベルですので、実際にはソフトに翻訳させずに自分で英文の右側に日本文を記入しています。
       
 翻訳作業は画面左側の原文を見ながら右側に日本語訳を作成し、全体として上から下へと進んで行く形になりますから、先に訳した部分が直ぐ上にあり、これを参照しながら文を整えたり必要なら複数の文をつなげたり逆に切ったりするのも簡単です。

 また、単語の検索が簡単で、各種の辞書を使える上に、自分で単語を登録したユーザー辞書も利用できます。こうして一通り翻訳したら訳文を段落ごとにコピーして原文ファイルに貼り付けます。ここでようやく上書き翻訳する人と同じ状態になるわけですね。

 コピーは少し面倒ですが、実は一番楽しい作業でもあります。ここまで黙々と翻訳してきた文章がさまざまなレイアウトや色、フォントに彩られて突然生命を吹き込まれたようになるからです。

 すべてコピーし終わって訳文ファイルができあがったら原文とPC画面上の訳文ファイルを照らし合わせて見直し作業を行います。そして最終段階では訳文ファイルを印刷して、誤字脱字があれば訂正して終了です。いつも一人でこんな作業をしています。