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本を書く医師 Top心筋梗塞と桔梗の 「梗」
                

心筋梗塞と桔梗の 「梗」


こんにちは。キーウィです。

 このところ、心臓の病気に関する論文や講演原稿の翻訳依頼が続いています。心臓の病気の代表といえば心筋梗塞もその一つ。心筋梗塞は、心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶ冠動脈が動脈硬化により塞がってしまうことで発生します。その結果、その先の組織が死んで、心臓が動かなくなるなどの深刻な事態が起こります。

 梗塞の「梗」の字は 「硬」 と似ていますが違う字です。気になったので漢和辞典を始め、中国文学者や中国在住の人が書いた資料にあたったところ、本来は 「固い芯がある枝」 を意味する漢字だとわかりました。
              
 例えば果梗と言えば果実が枝に付く柄の部分のことです。サクランボから長く突き出た軸を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。細いけれど強くて、途中でちぎるのはまず無理でしょう? あれが 「梗」 のイメージです。

 秋の七草の一つである桔梗 (ききょう) にも梗の字が入っていますね。この名前は、桔梗の根が強く、固い芯を持つことに由来します。この根を干したものは漢方薬になり、痰や膿を取り除いて炎症を鎮める作用があるとされています。

 では心筋梗塞で梗の字を使うのは、何かの芯が固いからでしょうか? おそらくこれは動脈硬化を起こした冠動脈のことを指していると思われます。ちょっと自分の手の甲を見てください。健康な血管はプニプニした弾力があります。しかし動脈硬化が起きるとこの弾力が失われ、固い枝のようになってしまうのです。

 おそらく古代の人も、心筋梗塞で亡くなった人を解剖して、心臓の表面にある冠動脈が固い芯のようになっているのに気付いたのでしょう。
      
 時々、心筋梗塞と書くべきところを、間違えて心筋 「硬」 塞と書いてあるのを目にすることがあります。でも硬の字では、血管が細い枝のように固くなるというニュアンスが消えるだけでなく、まるで心臓の筋肉が硬くなるかのような、間違った印象が伝わってしまいます。